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ヤスデとムカデ
ムカデーーどうしたんだろ、ぼく。
きみの足は数えられるのに
自分の足は数えられない。
あせっちゃうな、ぼく。
ヤスデーーあせるな、ムカデ。
ムカデーーしょげちゃうな、ぼく。
ヤスデーーしょげるな、ムカデ。
俺なんて自分の足もきみの足も
両方数えられないんだぞ。
ムカデーーえばるな、ヤスデ。
ヤスデーーえばるさ、ムカデ。
ムカデーーどっちも数えられなくて、なぜえばる。
ヤスデーー中途半端な算数ができるやつに限って、
しょっちゅう、あせったり
しょげたりしてるじゃないか。
ムカデーーふん。刺すぞ。ヤスデ。
ヤスデ〜〜ふん。いいぞ。サシデ。
〜〜詩集「虫の曼陀羅」より〜〜
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ヤスデ
ヤスデは
右列の足を正義と決めていた
左列の足を不義と決めていた
せいぎふぎせいぎふぎ
ふぎせいぎふぎせいぎ
ヤスデはそのように歩いた
ヤスデはひとりのときはそのようだった
雨ばかりのある日
ヤスデはひとり分の正義不義が
明証性もしくは自己主張に乏しいと気づき
正義不義の大連結を造ろうと呼びかけた
呆然自失の仲間も引き込み
なんのそのと折り重なった大集団！
右と左が重なって
正義と不義が重なって
ぎせいぎふぎせいぎふぎ
せいぎふぎせいぎふぎせ
いぎふぎせいぎふぎせい
ぎふぎせいぎふぎせいぎ
ヤスデはそのように連結行進した
ヤスデは集団ではそのようだった
そうしてヤスデの意に反し
行進は線路に及び
ますますヤスデの意に反し
列車は脱線転覆！だった
〜〜西沢杏子詩集 『虫の葉隠』より〜〜
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