| ２０１４年・虫の写真と詩 |
☆★☆
 |
「ニトベミノガ」 おしゃれと身を守る術は直結！ それがニトベさまの持論 葉っぱがお好き 木の皮がお好き 並々ならぬ衣装持ち 苔の飾りも 枯れた小枝も 皆々こだわりのあるお召し物 きょうよりあした！ あしたよりあさって！ 殻のなかのニトベさまの 声なき声が聞こえます ～～2014・12・23～～ |
☆★☆
 |
「ヤゴ」 ヤゴヤゴ ニャーゴに狙われてるよ 透けてる水が 運の尽きか 泥がなくては濁せないのだ だから ニャーゴが狙うのか ヤゴヤゴ ニャーゴに捕まる前に 急いで田んぼに逃げなさい マゴマゴしている場合じゃないよ 濁せる田んぼに逃げなさい 夢中で捕まえておきながら よくぞ言えるな 気休めを ヤゴヤゴ 急げ 急げや急げ ヤダヤダ ヤーダ 無責任にもほどがある ぼくらを捕らえたお前こそ その手で田んぼに運ぶべし ～～2014・12・20～～ |
☆★☆
 |
「サビキコリ」 あなたに会うと 故郷の山がしのばれる 昔の木樵が思われる カーン！カーン！カーン！ 金比羅さまの山の木樵が 松の木に斧を打ちおろす音が 向かいの山に木魂する カーン！カーン！カーン！ 昔の木樵のいでたちに よくぞ似ているキコリさま わが家の松はもう少し伐らないでね ～～2014・12・15～～ |
☆★☆
 |
「ルリタテハの子ども」 「ルリタテハを見ましたよ」 山男がいう アゲハでもヤマトシジミでもなく ルリタテハを見たという 「イノシシを落とし穴に落としましたよ」 という話なら前に聞いていた イノシシの子のウリン坊は超かわいい というのも聞いていた 子どもはみんなかわいいのだという ルリタテハの子どもだって 超かわいいって 知ってるだろうか ～～２０１４年１２月１１日～～ |
☆★☆
 |
「アカスジキンカメムシの子ども」 赤ん坊のときは まっ赤だったり てらてらてらりと 光ったり 子どものときは 白黒だったり ターコイズブルーの ヒゲにしたり ころころころころ 自分を変える 誰かの目をくらまそうというのでは ないけれど 脱皮をするたびに 目まぐるしく変わる自分が ぼく すこし恥ずかしい ～～２０１４年１１月２２日～～ |
トップページヘ
 |
「空蝉」 出会えたかしら 伊予介に 源氏の君の誘惑は いかがなものでありました？ 御子たちはいかがなされたものかしら？ 空蝉の君 この世は夏が過ぎました この世は秋になりました 尼になられたその後も 煩悩は巡ってきたかしら？ トマトの葉裏の空蝉の君 空蝉の君の空蝉 ～～２０１４年１０月１日～～ |
トップページヘ
 |
トウキョウヒメハンミョウ 小さな体に 飛び出した顎と大目玉 木洩れ日を浴びるかと思えば ツツツツ歩きで 何かをついばんでいる 何かヒトには見えないものを 大目玉だけに見えるものを 同じ所を行ったりきたりして ヒトには何の得もないことが わたしには大きな得になるのだと 教えるように 丁寧に 同じ所を行ったりきたりしてくれる ～～２０１４年７月２７日～～ |
☆★☆
 |
ニジゴミムシダマシ 幼いころは 世界のどこもかしこも 自分の周りと同じだとおもっていた 言葉にしたりはしないけれど 空に虹が出れば 世界のどこにも虹がかかっていて 自分と同じような女の子が 空を仰いでいるのだ と いまでは 小さな虫の背中に虹を見るにつけ 世界のどこにもかしこにも こんな虹がかかればいいのに と 願ってばかりのおばあさん ～～２０１４年７月２０日～～ |
☆★☆
 |
ゴミグモ 久しぶりに気の合うクモに出会った 墓地の片隅のゴミグモ 真新しくはないけれど ところどころ穴の開いた巣だけれど 枯葉なんかを飾ったりして 円網の真ん中には きりりと一本筋を通している ゴミと食べかすで 巧みに固めたむき出しの個室 ああ、棲みたいな こんな家に 梅雨の終わりの激しい雨も 音を立てて降る雹も なんなく素通りさせるこんな家に ただし、ただし、ただし、 きりりと通す一本の隠れ家は わたし自身が作る物！ ～～２０１４年７月６日～～ |
トップページヘ
 |
引き籠もりのヒダリマキマイマイ なぜだかとても気にかかる 昔の自分に似てるから 浅くは見えるが殻の傷 負っていながらそこかしこ 粘って緑に固定して 自分に見合ったしあわせが しとしと やってくるのを待っている いいね いいよ すてきな健気 あしたは きっと 雨がくる ～～２０１４年６月３日～～ |
☆★☆
 |
ヘイケボタル・幼虫上陸 緑の苔の下で これから繭を作ります ほどよく湿った土のなかで これから蛹になってきます 行ってらっしゃい 暗く湿った土のなかへ ほんの３週間だけの さようなら それなのに なぜ こんなに寂しいの 青い二つの光りの点滅が やがて一つの点滅になり 目を痛いほど凝らして見ても あなたはどこにも いなくなる ほんの３週間だけの さようなら なのに、 なぜ こんなに寂しいのだろう ～～２０１４年６月１日～～ |
☆★☆
 |
人形トビケラ ご覧下さい この衣 木屑 草の茎 木の実の殻を つなげて作った この衣 材質さまざま 形もさまざま わたしにかかれば ご覧のとおり 渋い衣のできあがり わたしの祖先は 勇気ある姉妹 昔むかしの岩国で 父に代わって 人身御供になった姉妹 水につかって 偲びます 遙かな昔を 偲びます ～～２０１４年５月１４日～～ |
 |
ビロウドツリアブ 目に見えない糸で 天から吊り下げてもらい 楽々蜜を吸う かに見える だけど 違う りっぱな自力のホバリングだ 細い翅を透き通るまで震わせ 水平になり 逆さまになり 必死で蜜を吸う 明け方の冷え込みから ふかふかのびろうどが護ってくれる ツリアブの周りは花いっぱい すみれ色 菜の花色 かたくり色の 春いっぱい ～～２０１４年４月１２日～～ |
トップページヘ
 |
スズメガの幼虫 掌に乗せたら うひょひょ と わらった くすぐってぇじゃねぇか 下ろしな と きた 「お前さんは じゃあ なにかい はちきれんばかりの この若さで 工事現場の江戸っ子の親方かい」 うひょひょ うひょひょ そんなこたぁ ねぇけどよ なんだか むずむずすんのよ やたら めったら くすぐってぇのよ 「お前さんは知らねぇんだ なんで そんなに むずむずしたり くすぐったかったりするかってことを」 知るも知らぬもないわさ 成りゆきまかせで ここにいるのさ 「お前さんが土の中から出てきたおかげで 世の中春になったっていうのに」 そうかい そうかい うひょひょっひょ しょってるわけじゃねぇけどよ ともかく 下ろしな ～～２０１４年３月２６日～～ |
☆★☆
 |
草蜉蝣（くさかげろう） 冬のさなかの薄衣 冬のさなかの薄緑 粉雪か風花か 見分けのつかない寒さのなか 凜と伸ばした触角のかすかな震え 杭をつかむ脚の健気 あなたのように生きていたい しょってるぅ！と いわれようと かっこつけてるぅ！と いわれようと あなたのように生きていたい この世の理不尽をかこつことなく すこし目を瞠ったり すこし翅を震わせたりして あなたのように生きていく ～～２０１４年３月２日～～ |
トップページヘ
 |
|
☆★☆
 |
クモヘリカメムシ 白い粒々に 囲まれてしまった 埋もれてしまった 生まれて初めてのこの冷たさ かじかんでしまう触角も脚も 昨日まで見ていた草も木も どこか遠くへいってしまった けれど、負けずに息をしよう 負けずに息をして 目玉を磨いておこう そうするうちに 冷たく白い粒々は ぼくの廻りから離れていくのだ ～～２０１４年２月１５日～～ |
トップページヘ
 |
大和玉蟲 もういいかい まあだだよ 乳母やの好きなかくれんぼ 草の葉陰で もういいよ！って言ったのに 乳母やはなかなか見つけてくれず 風に吹かれ 雨に打たれ たった一人で耐えに耐え もういいよ！ここにいるよ！ 里の暗がり 怖いのよって 言ったのに 乳母やはどこまで行ったやら どこを探しているのやら いつになったら 会えるやら ～～２０１４年１月１９日～～ |
☆★☆
 |
乳母玉蟲 もういいかい まあだだよ 残暑の季節に始まった 玉蟲姫と乳母やのかくれんぼ もういいかい もういいよ 粉雪舞う日に やっと出た 姫のもういいよが やっと出た 鬼の乳母玉 隠れた姫を探し 風に吹かれ 霙に打たれ それでも まだ はかなくはなれぬわ 手脚凍え 仰向けになり それでも まだ はかなくはなれぬわ 鬼の乳母玉 ひたむきに 玉蟲姫を追い求め 衣の色もくすみ果て 君知るや 知らずや君 玉蟲色の玉蟲姫を ～～２０１４年１月１５日～～ |
☆★☆
 |
カメノコテントウ 子どもを負ぶったものでした 「亀の子」と呼ぶ負ぶい紐 可愛い可愛いと 負ぶったのでした きっと あなたの形をしていたでしょう 子どもとわたしと二人して あなたの形をしていたでしょう あなたを見ると思い出す 子どもは大きくなったけど いまでも背中にいるようで いまでも負ぶっているようで あなたを見ると思い出す ～～２０１４年１月６日～～ |
☆★☆
 |
マメコガネ どんなに固い葉も カリカリッ！ カリカリッ カリカリッ！をやってるうちに やってきました アメリカへ どんなに分厚い葉も バリバリッ！ バリバリッ バリバリッ！をやっているうちに やってきました ジャパニーズ・ビートルズ アメリカシロヒトリのささやかなお返しです 日本の政府が言ったとか ～～２０１４年１月６日～～ |
 |
あかたては |
トップページヘ