螢蛾

ここ三日
毎晩かかさず続けて三日
虫めづる姫君のもとへ
通ってくるのは螢蛾の君

フロックコートにしなだれ烏帽子
はすに掛けてる白い勲章
威儀をただした格好で
毎晩七時に　とんとんとん

虫めづる姫君はそわそわと
宵のうちからお床入り

けれど意外や螢蛾の君は
時刻以外はファジーなお方

ばさばさ　ばさばさ　ばさばさと
意味無い羽音を振りまくばかり
真っ赤な顔してうろつくばかり

今夜も七時
そろそろおでまし
今夜は燃えるか螢の色に


〜〜西沢杏子・詩〜〜